第57章 会話
「明日お休みなさっていいですよ」
「えっ!?」
「予定より早く片付けてきてくれましたしお疲れでしょうから」
リネルはパリストンを不思議そうに見つめた。
「嬉しいですけど なんで?」
「ここ数日傷だらけだったり妙に疲れた顔をしていたりね。1日だけではありますがゆっくり労をねぎらって。そしてまたフル稼働を願います」
リネルは少しの呆れ顔を見せた。
「……狙いはそこですか」
「もちろん」
「心配しなくても仕事には影響出ないようにはしますよ……あなたはミスすると最も相手にダメージ与える方法でそれを指摘する事知ってますし……」
「弱点を攻めるっていうのは、正攻法ですよ」
同じく徹夜明けとは思えない程、きらりとほほ笑むパリストンはこちらが女としての自信を失う程に 肌も髪もつやつやだ。
「……よく思うんですけど」
「なんです?」
「飴と鞭というか外面と内面のギャップというか…人の扱いが本当にお上手ですよね。感服します」
「そんな気はないですよ。リネルさんの事は気にかけているけれど」
「それはありがたいですが…」
「あなたがいないと困るんです……ずっと僕の側にいて下さいね?」
珈琲カップを静かに置きそう言うパリストンに、リネルは呆れ顔を見せた。
「意味深な言い方。今までそうやって何人の女性を落として来たのか」
「人聞き悪い。こんな事貴女にしか言わないよ」
「愛より恋より、ハンターとしての純粋な目的の為に、ですね」
「そう捉えられるとそうですが。今一番いないと困る女性はあなただけですよ。」
「……寝不足で情報処理が追い付かないからか、不本意にも少しときめいた気分になってしまいそうなのですが……」
「はは、僕も寝不足で頭がハイになってるのかな 人肌が恋しいのかも。これ以上無駄話していると本気モードで口説きたくなってしまうかもしれないな」
「それ 逃れられる気がしなくて怖いです……」
「さぁ、ではもう一仕事です! 残り2個ですがどちらにします?」
「私はチョコがいいです」
「じゃあ僕はシナモンね」
軽口も気分転換の手段の一つなのだろう。そして 二人でもくもくと、糖分を接種した。