第56章 回答
「除念師を探してる」
「除念師?」
「ああ」
「除念が必要な何かがあるの?」
「能力として欲しいんだ」
「……クロロも強欲だよね」
「目的達成思考なだけだ」
浮いたような話を想像した自分に拍子抜けしつつも、リネルはクロロとの会話を続けた。
「つまり心当たりがないか、私にそれを聞きたいんだ?」
「ああ、レアな能力だろ 1から探すのは骨が折れる。何か知らないか?」
「んー……」
クロロは探るようにゆっくりと口にした。
「ハンター協会程の組織なら…1人や2人、いないのか?」
「答えられない」
「だよな。お前にも立場あるしな」
軽い口調で述べた後、クロロはふぅと息をついた。
少しの間を置いた後、リネルは小さな声で言った。
「…………スノークロノス」
「薬会社か?スノークロノスって」
「うん。探る価値はあるかもしれない」
「ほう」
「確実要素はないし やるなら急いだ方がいい。私が言えるのはここまで」
「なるほど」
リネルの頭には、 電話の先で不敵に笑うクロロの顔が浮かんでいた。
スノークロノス社が近々なんらかの方法で抑えられるのは確実。
仮にリネルの憶測が正しく除念師も絡んでいたとしたら、 公的に取り押さえられるよりは 恩を売った上で知り合いであるクロロが持っていた方がリネルとしても今後助かる展開があるかもしれない。
さらに少しでも早くスノークロノス側の内情をかき回す事で 向こうに不測の事態を煽れば、犠牲者を減らす事に繋がるかもしれない。
そんな打算的な事を考えていると電話口から満足げなクロロの声が聞こえてきた。
「先日から素晴らしい働きぶりだなリネル」
「たまたまね。」
「……欲しくなるな、ウチに」
「情報は出したけど、盗るところまで手伝う気はないよ」
「……惜しいな」
「請求はまた別途させてもらうからね」
「ああ。構わない」
「確度の信憑性は五分五分ってトコだし相応の金額にしとくけど」
「律儀だな。」
会話が終わるとクロロは電話を切った。
明確な用件のみを口にするクロロの声を思い出しながら、舞い上がっているのはやはり自分だけかと思うと溜息が出てしまう。