第56章 回答
クロロは普段よりもやや快活な口調で話し出した。
「息災なら何よりだ。普段からもそうだが便りがないのは無事な証拠ってヤツだな」
「うん。まぁ」
「今は外か?電車の音がする」
「うん。ちょっと仕事で出てる」
リネルはクロロの電話の目的を聞いた。
「どうしたの?何の用?」
「なんだよ。せっかちだな」
「ちょっと今バタバタしてて」
「そうか。では端的に。会えないか?リネル」
リネルは携帯電話をぎゅっと握り直し、瞳をしばたかせる。
「…………え?」
「聞きたいことがあるんだ お前に。」
リネルの脳裏には、先日イルミと深夜に話した会話が浮かんだ。
自分もクロロに会って話をしたいとは思っていたし、いい機会ではある。
しかしイルミ以上にクロロとは一切したことのない色恋話が今更クロロの口から出るとは信じがたく、鼓動が早まるのを感じながら その目的を問い掛けた。
「一応聞くけど、話って何? 電話じゃ言えない事?」
「そんなことはない。ただ……たまには面と向かってお前と話すのも悪くないかと思っただけだ。最近は仕事絡みの話ばかりでしばらくゆっくり話してないしな」
含みのある言い方にリネルの心臓がドクンと音を立てた。
それを悟られないように、平坦な口調で答えを返した。
「すぐには厳しいかも 今は忙しい。言えるなら今言ってよ」
「そうか、わかった」
クロロは声のトーンを低くした。