第56章 回答
その日の深夜。
スノークロノス社に侵入し その調査を終えたリネルは、真夜中にも関わらず ホテルのパソコンでパリストンに報告メールを作成していた。
警戒心の強かった昼間の社員達の印象の割には 案外簡単に侵入も調査も済んだ事が幸いし、一晩で内容のほぼ全貌を掴むことが出来た。
これならば先日に暗殺の仕事に同行したクリスフォード邸の方がよほどセキュリティ面や警備も手厚いとリネルには感じられていた。
「………、」
数刻前に見た光景を頭に浮かべながら、リネルはキーボードを叩く指を早めていた。
sub:スノークロノスの件
________________
お疲れ様です。深夜に失礼します。
調査が終了したので簡潔にご報告します。
数日前から販売されている新薬にある念が込められ、それを主に株主を中心に販売している模様。
主犯である能力者の所在、能力、目的、単数か複数かも含め詳しくは今現在不明。
現段階では比較的裕福層の株主や病院等の大型取引先への出荷に留まってはいますが、今後はこれを一般向けにまで販売を拡大する計画有。
本新薬ですが言い換えれば劇薬ドラッグ。
1度手を出すとその念から抜け出す事は完全不可能になり心身共に廃人と化し、常用を続ければやがては死に至る。
金銭的に余裕のある富豪顧客が急に会社に多額の寄付を寄せたりと、傘下につくような事実も有り。
故に推測ですが除念師も絡み、あえて除念を行い 犠牲者をうまく操っている可能性も否定出来ません。
犠牲者を増やさぬためにも早急に対応された方がよろしいかと。
以上、取り急ぎ用件のみ 失礼致します。
________________
数分も立たぬうちに返信メールが届いた。
Re:スノークロノスの件
________________
了解しました。ご苦労様。
それを確認した後、リネルはパソコン内の情報隠滅のためにメールを削除し パソコンを閉じた。