第54章 追憶
数分後、入って行った時と少しも変わらない表情のまま イルミが建物から出て来た。
「暗殺完了、確認して」
「…はい」
殺気も気配も何も残らない部屋の中で、リネルの今回ターゲットは既に絶命していた。
眠っているのかと錯覚する程に乱れのない死体の様子に、リネルは意外と言いたげにイルミを見た。
「…もっとそれっぽく血生臭い感じを想像してました、心臓か喉元を一突きとか」
「そういう映画の見過ぎじゃないの?希望があればそう殺すこともあるけど」
「いえ 無駄がなくてさすがプロの仕事だなと思いまして」
「人間て壊す程後始末面倒になるしね、だから殺り方は任せてもらえるのが実は一番助かる」
「…なるほど」
リネルはイルミに探るような目を見せた。
「ちなみにどうやって殺したんですか?悲鳴や不審な感じは一切なかったし…」
「殺り方を任された以上、その辺は企業秘密」
「勉強させてもらえないかな〜なんて」
「それは依頼内容に含まれてないよ。」
「イルミさんの能力と関係あるのかな?外傷なくして人を殺すとなると…操作か特質、具現化も可能性なくはないかな」
「詮索しても無駄。教えない」
カマをかけても少しも表情を変えないイルミを見ながら、リネルは 一応無事に任務が終わった事に小さく息をついた。