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〈H×H 長編〉暗殺一家の嫁

第54章 追憶


「リネルと言います」

「リネルね。オレはイルミ、よろしく」

「あ、はい…」

「依頼人自ら現場にまで来るって事は拷問とか惨殺希望?」



表情ひとつ変えずに平然と述べるその人物に、リネルも疑問を投げかけた。


「ひとついいですか?イルミさんは、まず…どなたなんですか?」

「どなたってうちがゾルディック家と知って依頼したんじゃないの?」

「……ゾルディックって」


リネルは目を見開いた。


「あの暗殺の?」

「うん」

「……じゃあ、殺しのプロ?」

「そう。てゆーか話ししに来たんじゃないんだけど。ここにいるヤツ殺らなくていいの?」


ハッと任務を思い出し、リネルは時計を急ぎ見た。


「そうだ時間迫ってる!仕事しなきゃ」

「だからその仕事をするのにさ、どう殺ればいいのか指示してよ」


少し考えてからリネルはイルミを見た。
目の前にいるのは暗殺のプロで自分の事を依頼人と呼んでいる。
さすがに今日も失敗するわけにはいかないし、結果が得られれば合理的に事が済むに越したことはなかった。
リネルは確認を込めてイルミに言った。


「…とりあえず私はイルミさんの依頼人なんですよね」

「うん」

「なら…ここに潜伏するというターゲットの暗殺、殺し方含めて全てお任せしていい…って事ですよね?」

「わかった」



イルミはスッと背を向け建物に足を運ぶ。
そして途中で小さく振り返りリネルに言った。


「見ないの?」

「いいです 別に」

「ふーん、なら何のためにわざわざ来たの?」

「ええと。事後確認だけはさせてもらえれば」

「信用ないな。まぁいいや、了解。少し待ってて」


イルミは再び背を向けると建物の闇に姿を消した。





リネルは建物の外から中の様子を必死に探っていた。


「………、」


物音こそ何もなかったが 時折漏れる気配に寸分の迷いや躊躇もなく、無駄なく事が行われているのがひしひしと伝わり、その事に感嘆と少しの恐怖を覚えた。

リネルは眉を寄せながら 細い月明かりに薄暗く浮かぶ 目の前の建物をじっと見据えていた。


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