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〈H×H 長編〉暗殺一家の嫁

第54章 追憶


「はぁ………」


そのまますぐに仕事に取り掛かる気分にもなれず、リネルはハンター協会の屋上に足を運び 高層階に吹く強めの風に髪を揺らしていた。

パリストンの先程の様子を思い出しリネルはぽつりと言葉を吐いた。


「迷惑かけちゃったなー…」

「どんどんかけてやれや」


急に背後から聞こえた声にリネルは派手に振り返った。


「ジンさん?!」

「小娘がなに黄昏てんだよ」

「絶で近付くなんて悪趣味ですよ!」

「悪趣味しか持ってねぇっての。ハンターのくせに簡単に後ろ取られてんじゃねーぞ」


ジンはリネルにニッと笑顔を見せた。


「やるじゃねーか、パリストンにあんな顔させるなんてよ」

「いい意味で、じゃないですよ」

「どっちにしろ今のハンター協会であいつの鼻空かせる人間は減ってきてる、上出来だ」


励ましのつもりなのか軽口でそう言った後 ジンは無言のままリネルの隣に並んでいた。



風の音が響く中、リネルはふとジンに問い掛けた。



「ジンさん」

「なんだ」

「…この仕事する上で1番大切な物って、何ですか?」

「小娘が そんなのもわからなくてハンターやってんかよ」

「その呼び方やめてってば…それにわかんないから聞いてるんですよ」


少し拗ねたような顔をするリネルに ジンはハッキリと言った。


「1番大切な物か。志望動機や立場 人それぞれだろ?つまりその答えも人それぞれだろ」

「…そうですか」

「オメーはまだ見つけてねぇんだな」

「…ん、…ジンさんは?」


ジンは口角を上げた。


「オレらハンターにとって情報ってのはかなり重要だろ」

「そうですね、確かに」

「その重要な情報を得るには まず人脈がものを言う、人との繋がりや仲間は大事にすべきだろ」

「つまりジンさんにとってはお仲間の皆さん、て事ですか?」

「ああ、そうかもな」


横目でリネルを見た後、ジンはくるりと背中を向けた。


「答えを見つけるまではそれを頭の隅に入れといて損はねーぞ、リネル」

「私の名前、ちゃんと覚えてはいてくれたんですね」

「言ったろ?仲間は大切だって」


ジンは小粋に片手を上げ、その場を去った。

リネルは風に揺れる髪を押さえながら、空を見つめていた。
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