第54章 追憶
「暗殺だと?」
「うん、クロロやった事ある?」
その日の夜、リネルはクロロとある喫茶店にて会っていた。
仕事に限らず何か疑問や相談があればクロロに聞くのがいつしかリネルのスタンダードになっていた。
クロロは不思議がる顔をしながら答えた。
「とにかく殺ればいいんだろう、普通の殺しと何が違うんだ?」
「だからそれを聞きたいの」
「意識的にやった事はないがようは目立たなくすればいいんだろう、殺気を減らし 素早く簡潔に」
「ん~、それはわかるけど…」
「なら簡単だろ」
「クロロからしたら簡単かもしれないけど、私はほら、初めてだし…」
少し心配そうな顔をしているリネルに、クロロはきっぱりと言った。
「別に最初からうまくやろうとしなくていいだろう、誰だって失敗もするしな」
「そうだけど…一応仕事だしミスしたら…」
「大体お前な。前から言っているが一応は自分で選んだ進路で自分の仕事だろ、いちいちオレを頼るなよ」
「でも、私…他に頼る人、いないし」
クロロは少し肩を落とすリネルを見つつ、スッと席を立った。
「え?!クロロもう行くの?」
「ああ、何事も経験だろ。思うようにやってみろ」
「ちょっと!待ってよ!!」
外に出るとリネルはクロロを追いかけるように駆け寄った。
「え、クロロ、ほんとにもう行くの?」
「ああ」
「…………冷たいな。」
「オレはオレで忙しいんでな。」
クロロは一度息をつく、残念そうな顔をするリネルに目線に合わせた。
「無事に終わったら飲みにでも連れてってやるよ」
「…もしも無事に終わらなかったら?」
「そうだな。その時は愚痴聞いて嘲笑ってやる」
クロロはニヒルに微笑むとリネルの頭をぽんと撫でて その場を後にした。
リネルは触れられた頭が少し熱を持つような感覚の中、クロロの後姿を見つめていた。