第54章 追憶
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今から4年前。
かねてより狙っていたハンターライセンスを無事に取得後、人員募集のあったハンター協会へ就職を決めた。
そしてそのまま 運がいいのか悪いのか、当時ハンター協会でそれなりの権力を持っていたパリストンの秘書兼補佐係としておさまった。
個人で雇い主を探しハンターとしてやっていく道も考えた。
しかしそうはせずにハンター協会を選んだ理由は、一人前として自立するのに情報や組織がしっかりしている点、そして元より必要外の殺人を好まないリネルにとっては そこはそれなりに明るみのある機関であった事があげられた。
当初は慣れない仕事に戸惑いも多かったが、ハンター協会には助言やフォローを入れてくれる人間も多く そこを職場として選んだのは正解であったと思えていた。
数ヶ月経ち 仕事にもそれなりに慣れてきた頃、上司にあたるパリストンからリネルの元に一件の仕事が舞い込んできた。
「リネルさん、一つお願いしてもいいですか?」
「なんでしょう」
「貴女にとっては初めてのお仕事になりますけど、…ある人間の暗殺です」
「暗殺?」
その物騒な言葉にリネルはつい言葉を聞き返した。
パリストンはそんなリネルに 笑顔のまま丁寧な口調で用件を聞かせた。
「我々協会にとって著しく有害な人物、一般市民に卑劣な行為を行う人物、…そういった輩は稟議にかけた上で処分するのが決まりです。」
「…そうですか」
「で、この人物。処理をお願いしたいんです」
「…わかりました」
手渡されたファイルを見ると、その人物について詳しい情報が記載されていた。
相手は一応能力者、しかし能力の内容や犯罪歴を見るとそこまでの使い手ではなさそうである。
「我々が処理するのはブラックリストに載るレベルではない人物ばかりです、戦闘能力で言えば敵ではありませんよ」
「…はい」
リネルは資料を見ながら初めての仕事について、思考を巡らせた。
困った時、助言が欲しい時に1番に頼る人物は一人。頭にはクロロの顔が浮かんだ。