第53章 食事会
「あっ……おいしい!私コレ好きだな」
「最初にオレ等が作ってたのと全然違ぇけど」
「百聞は一見に如かず。とはこの事だな」
落ち着いた品ある雰囲気の店内で物珍しい郷土料理を口にしながら、三人はカウンター席に並びスシをつまんでいた。
久しぶりに会うこともあり 話に花を咲かせている途中、クラピカがリネルに質問を投げた。
「リネル 結婚したそうだな」
「うん、まあ」
「相手は例のハンター試験でギタラクルの仮称で参加をしていたキルアの兄、……だそうだが……」
「うん、」
「何故だ?」
「え?……何故と言われると、……成り行きで……?」
返答に困った顔をするリネルを見て、クラピカは目を大きく開いた。
「成り行きか。そうか、やはり」
「え?やはりって?」
「今流行りの“デキ婚”というやつなのだな?またの名を“授かり婚”とも言うらしいが」
「はっ?ちょっと待って何その早とちり!」
リネルは手元の慣れないハシを落とした。
「結婚願望があるようにも見えなかったリネルがとなると既成事実が先立ったのかと」
「違う違う!」
「そうか 違ったのか……。キルアの兄は正直少々 人間味に欠けると思ってはいたが 男は子供が出来ると変わるとも言うし それなりにはやっていけるものなのかも含め私なりに心配していたのだが。取り越し苦労だったわけだな」
「そこまで深く考えてくれたのはクラピカが初めてだ……」
レオリオも呆れ顔で眉を上げていた。
「クラピカ、お前……とんだ妄想癖があったモンだな」
「一緒にするなレオリオ。妄想ではなく事実と一般論から推測したまでだ」
「結婚の事はみんなに驚かれるけど今のは逆に驚かされたな……」
仮に子供でも出来てしまっているだなんて、身震いを覚えそうだ。苦笑いを見せていると、レオリオが身を乗り出してくる。
「そーいや新婚旅行でバッタリ会ったけど、なんだかんだ仲良さそうだったよな。色々驚いたけどよ」
「……あの頃はそれなりに、今よりは……ね」
「えっ 今はうまくいってねえの?」
「んー……どうだろう……」
リネルは曖昧に言葉を濁した。