第52章 出張
リネルがスノークロノス社についたのは昼過ぎあたりであった。
規模こそさほど大きくもない製薬会社ではあるが、ここ最近で株価が急上昇したり 財源も不明なのに生産ラインや研究施設を大幅に増やしていたりと調べれば調べる程に引っかかる点が多かった。
本日は、ハンター協会直々の調査という事は当然伏せてあり 政府公認の第3者機関からの事業状況確認という名目になっている。
今日の要件は、数名の会社幹部に 形式的に作ってある質問項目を確認、明日に企業内部の見回り調査を行う予定だが、本来のリネルの仕事は深夜の予定だ。企業内に侵入し、表向きの調査では拾えない裏部分を洗い出すのがリネルの役目であった。
佇まいの立派なビルに着いた。受付を通ると早速応接室のような広い部屋へと通された。
「わたくしグラントニア法人のマリルと申します。本日はよろしくお願いします。」
「ようこそ。よろしくお願いします。」
偽名と名刺で 企業トップと思わしき人物とそれなりの挨拶をかわした後で、リネルはロの字型に用意されている席の一旦につくよう促された。