第5章 後押し
「仕事辞めるのか?」
「えっそこっ?!仕事じゃなくて結婚の話してるんだけど」
「オレが旅団を作った時お前をわざわざ誘ってやったのに。それを断りハンター協会を選んだ割りに、結婚ごときで辞めるのか?」
「それは……ってゆうか結婚しても仕事はやめないよ!」
クロロは話を戻すべく、軽い咳払いをする。声のトーンを落ち着かせて静かに話し始めた。
「リネルが結婚か……シャルやフィンが聞いたら残念がるぞ、可愛がってたしなリネルの事」
「そ、そうかな…」
「で、一応聞くが相手は誰だ。職場結婚か?」
「職場ではなくて…あ、でも、完全に無関係とは言えないかもわからないけど…」
「回りくどい。誰だ」
「えっと…クロロも知ってる人で…」
「なに?」
クロロの眉が俄かに上がった。リネルはそこから目線をそらせた。
クロロとイルミが知り合いなのはクロロ経由で知ってはいたが、どの程度の深さでの知り合いなのかは皆目理解していない。それにクロロとの話題にイルミが上がる事は殆どなかった訳で、裏では仲良く愛を育んでいたのかと変に勘違いされやしないかと、つい言い黙ってしまう。
「オレには言えない相手なのか?」
「そういうワケじゃ…」
クロロの視線がそろそろ痛い。リネルは言いづらそうに小声で話した。
「……イルミさんて知ってるよね?」
「イルミって、ゾルディックの長男か?」
「そ、そう」
リネル自身が気まずくて仕方なく珈琲を一気に飲み干した。クロロは状況を整理するように話しかけてきた。
「知らなかった。お前ら付き合ってたのか」
「違っ…まさか!殺しの依頼先ってだけ」
「じゃあなんでいきなり結婚なんだ」
「えっと、結婚しようって言われて…」
「イルミはお前に惚れていたのか」
「それも違う!告白されたことないし」
「じゃあリネルの方が片思いか?……そんな趣味だったのか……」
「それも違うってば!」
リネルの回答は否定ばかりで話が進まない。クロロはリネルの話を要約し、説得するように畳み掛けてきた。
「つまりお前は、何故かプロポーズされ 不覚にも女心をくすぐられてついそれを受けたが、今頃になって迷って混乱してる……そういう事か?」
「うん。まぁ……一部語弊があるとは思うけど」