第51章 話合い
ぴたりと止まるイルミに向かい、リネルは切ない表情をありありと浮かべ言う。
「…………言わないで」
イルミは顔色を崩さぬまま、ほんのりとだけ首を傾げて聞いた。
「どうして?」
「……今の私には、それを聞く資格が、覚悟が、ないと思うから」
「どういう意味?」
「………」
「クロロ?」
「……っ………」
「なるほどね」
その名を出され、リネルは明らかに動揺の色を見せる。イルミは身じろぐリネルの腰元を軽々片手で押さえ、言葉を続けた。
「オレはリネルを手放す気はないよ」
「わかって、る……」
「ならどうするの?」
「……けじめ、……つける……」
リネルは下唇を噛み締めながらなんとかそう口にする。イルミは微かに瞳を細くした。
「クロロに会いに行くって事?」
「言いたい事がある……、……クロロに」
「何を言うつもり?」
「……」
「オレには言えないような事、ってワケね」
リネルは イルミの指摘を肯定するよう思い切り目を瞑る。
同時に、身に触れていた掌が思い切り衣服の中を滑る感触があった。腹から胸へ、服をたくし上げる行動の意図を予感し、リネルは逃れるよう 焦った声を出した。
「……イルミ、ま 待ってよ……っ!」
「リネルはもうオレのものだよ」
強引に身体を撫でられる感触から逃れようと身をよじってもイルミがそれを見逃すわけもなく。リネルは泣きそうな顔をしながら思い切り声を荒げた。
「離して!!イヤっ!!」
「…………」
「今日はやだ!!こんなんじゃ、そんな気分になれない…っ…」
「そう。」
イルミはリネルからあっさり手を離す。数歩距離を取りいつもの無機質なる声で言う。
「なら、部屋に戻ったら?」
「……、……」
「冷静に話も出来ない、こっちの話も聞く気なし、ヤるのも嫌。もうここにいる意味ないよね」
「……ッ」
リネルは逃げるようイルミに背を向け、ドアノブを握ると 部屋を飛び出した。