第51章 話合い
イルミに負けまいと リネルは必死に言葉を探しながら、ゆっくり思いを口にしていった。
「理解……っていうのは、その もっと私の事を信用してもらいたいって事で。私だって子供じゃないし……昔は旅団のメンバーと一緒にいたりもした、この世界 綺麗事だけじゃ生きていけないのは痛いほどわかってる。……だから、そこまで勝手な危険過ぎることは、しない……」
「理屈ではね。じゃあ話の途中で黙って家出するのは勝手な事じゃないの?」
「……勝手、かもしれない」
リネルは先程ヒソカの家であった事を思い出し、歯を食いしばり目元を寄せる、ますます小声になっていった。
「……自分でも、わかんなくなってきた。どうしたらいいのか、どうすべきなのか……」
「言ってることがすぐ変わる。それをどう理解しろって言うの」
「……わかんない」
「リネルと話し合うこと自体が 無駄みたいだね」
イルミはそう吐き捨てた。
しばし続く重い無言の空間に耐えかねたリネルが、少しだけ目を伏せ 小さな声を出した。
「……イルミは」
「なに?」
「私を、どうしても支配下においておかないと気が済まないんだよね」
「支配?そんなつもりは全くないよ。その言葉は適切なのかな」
「私の意思を無視して行動を抑制する……それって支配だよ……」
イルミは先程クロロに言われた台詞を思い出していた。それと考え方の酷似するリネルに対し、向ける視線をやや鋭くした。
「身の安全を考慮することに何故そこまで抵抗がある?」
「決められた範囲でしか動けないなら、まるで家畜と同じだと思う」
「ものすごく悲観的な捉え方するんだね」
「私はハンターだよ、自己責任の仕事をしてる……イルミに何かを強要されたくて、まして支配されたくて、結婚したんじゃない」
言葉を探しながら相手の顔色を伺いながらの会話は、えらく神経を削る思いだ。リネルは、目頭が熱くなる感覚を覚えていた。