第50章 帰路
「……っ……っ……」
「え?ど、どうしたんだよ、リネル……」
リネルは肩を震わせながら、キルアの肩で涙を流していた。
先程の件を思い出し、激しく後悔と反省の思いが胸を締め付けていた。
「う……っ……ッ」
「リネル………」
心が既にいっぱいいっぱいだった。
多くの我慢が、不安が、頭の中によぎっていた。
仕事や日常生活に追われ、自分の気持ちの向かう先もよくわからなくなっていた。
結婚以降 気付かぬフリをしていたが、ガラリと変わった生活空間に 不満や苦労が全くないわけでもなかった。
形ばかりが先走り 己の感情など二の次だったはずの結婚だが、どこか目をつぶるように避けていた事柄が ここ数日で一気に露呈し、 整理をつけなくてはいけない状況に 自分でも何からどうしたらよいのかという 戸惑いの気持ちが大きかった。
「……もう、私、ダメかもしれない……」
「な、なにが」
「……何もかも……わからないよ……」
言葉にならぬ感情があふれ出すように。リネルの目からは涙が止まらず その泣き顔を隠すようキルアの肩で泣き続けていた。