第49章 失敗
「ひ……イヤっ」
ヒソカは上半身に着ていた服を容赦なくまくり上げてくる。
リネルはヒソカ手首を掴むとそこに思い切り嚙みついた。
ヒソカは顔色を変えぬままリネルの喉元に爪先を向けてくる。背筋がざわりとする、ヒソカから走るオーラの感覚を得てリネルは両目を瞑った。
「一応怪我人だし、優しくしてあげようと思っているのに」
「や、やだ、やめて」
「そうだ。いいコトを思いついたよ」
ヒソカは急に目線を横にずらした。リネルも警戒心を強めるばかりだ。
「キルア 殺っちゃおうかな」
「え……?」
「ボクにリネルが寝取られてキルアまで殺されたと知ったら、イルミは本気で怒るよね」
「っ」
「それともゴン?2人まとめてっていうのはさすがに勿体無いし……迷うよねぇ」
ヒソカはキルアに向けていた視線を、リネルに戻した。
「さぁクイズだ。キルアとゴン、リネルはどちらに生き残って欲しい?」
「……そんなの選べるわけないし、絶対に許さないから」
「そういう所もズルいんだって。キミは」
ヒソカは再度顔を近づけ無理矢理リネルの視線を拾ってくる。
「答えは出てるクセに」
「……っ」
「イルミの手前、キルアに何かありましたってワケにはいかない身だろ?もしかしたらキミがイルミに殺されるかもしれないし」
「………」
「キルアのためならゴンを見殺しにするだろ」
「…………しないよ」
「それを知ったらキルアは、キミを本気で恨むかな」
「…………………っ」
リネルは悔しげに顔を歪め、身体の力を抜いた。目元には薄っすら涙が滲んでいた。
「…もう、いいよ…」
「ん?」
「私を好きにして気がすむならそれでいいよ」
リネルの目からは涙が溢れ、声が震えていた。
「命の重さに順位はないけど。……実際あの家において私とキルアの命の重さは同列じゃない…私の勝手で…キルアを失うなんて許されないんだよ…」
「だろうね」
「今日は私が勝手に2人を巻き込んだ。私は何でも言うことを聞くから関係ない2人には手を出さないで」
ヒソカは一瞬だけ軽蔑を込めた目をする。そして再びリネルに告げた。
「いいよ。2人殺っちゃうのも勿体無いし今日はキミが愉しませて」