第49章 失敗
その場で躊躇なくリネルの服に手をかけてくるヒソカを、リネルは無理矢理に振り払いなんとか後ろにずり下がる。
「嫌っ!やめてよ!」
「アレ、脱がない派?」
「派って、違……てゆうか今脱がないとか当たり前でしょ!」
「着衣プレイね。まぁイイよ」
リネルは訝しみ思い切り眉を下げた。背筋にひやりと冷たい空気が走るようだった。
「ヒソカ、冗談だよね……?」
「それは自分で確かめてよ」
「……っ」
一歩で距離詰められ、あっという間に押し倒されてしまった。両手を押さえる力もリネルに覆いかぶさる身体の大きさも、恐怖を煽るには十分すぎる程だ。
当然だが ここまでの至近距離でじっくりと、この男に触れたことがない。清涼剤の混ざるような独特の異性の香りに胸がざわざわした。顔を寄せられると、唇が震えそうになってしまう。
「実際のトコロは飼いならされてるのかな」
「は……?」
「イルミに。どの程度、仕込まれているのかなァって」
「そんなの、ない……も、やめて……」
「ビクビクして怯えてて。コワいの?」
「………………………」
「まさかハジメテ?」
「……………………っ」
「だよねぇ。……残念」
ヒソカはリネルに身体を押し付ける。耳朶に味わうように甘く歯を立ててくる。
「……や……っ」
「感度良さそうだね。実はボクもまともに女性を抱くのは久しぶりで、緊張してるんだけど」
「う、嘘つき!し、心拍普通じゃん!!」
「バレた?耳が良いんだね」
「てゆうか……な、なんか……あ、当た……っ」
「ウン。当ててる♡」
「ふざけ……ないでっ」
ヒソカはリネルの顔を両手で掴んだ。悔しそうに口元を震わせるリネルを真っ直ぐに見下ろした。
「イイねぇ その顔」
「だ、誰か……」
「ちょっと楽しくなってきたカナ」
「っ」