第48章 追跡
クロロが先に静寂を破り、静か声色で言った。
「先程リネルが大事だと言ったな」
「うん」
「なら何故 理解してやろうとしないんだ」
「理解か。それも言ってたな今朝」
「お前だって自分の考えを理解させたいから リネルに言う事を聞かせようとするんだろ」
「そうとも言えるね。リネルもオレの事 理解してないって事になるけど」
クロロはいつの間にか 呆れた顔を見せていた。
「一応は結婚までしてる仲だろ。お前が何故考えを強要するのか、その理由はわかっていると思うが」
「それをわかっていてオレを受け入れられない理由は 最終的にはやっぱりクロロがいいからって事になるよね」
「いちいち理屈じみてるな。感情論で考えろよこういう事は」
「感情か……クロロ クロロうるさいし感情こそ ここに向いてると思うけど」
「そうじゃないだろ。言葉できちんと言ってやらないと仮説を確証に出来ないし確証がないと踏み切れない、つまりリネルは色恋ごとに臆病なんだ」
「そうは見えないけどね、記憶飛んだ時なんかそういう話ばかりしたがってたし。クロロがいいって言ってたしクロロから離れたりしないってはっきり言ってたよ」
「…ふ、そうか」
クロロは昔を懐かしむように 柔らかく笑って見せた。
「あの時のリネルを見てるならお前も知っての通り……リネルはどう見てもオレに好意があるが1度も告白をされたことはない、それくらい臆病で慎重なんだろ」
「周りからは一目瞭然なのにね。ま、いいや」
イルミは探るようにクロロを見据えた。
「リネルの今後の選択次第ではクロロはリネルを奪う気がある、そういうこと?」
「ああ。そうかもな」
「渡さないけどね」
「それはお前の意思で選択権はリネルにある。そうだろう?」
面白がるように目を伏せて笑うクロロから イルミは目線を目の前の剥製に移し 黒い目を少し細めた。
「アレ壊して帰ろうかな」
「やってみろ。無事ですむと思うな」
微笑を浮かべるクロロに背を向けると、イルミはそのままその場を去った。