第49章 失敗
「ヒソカ…?」
「……………」
いつの間にかガラリと雰囲気が変わり、 始めて見る普段の余裕の笑みの欠片もないヒソカの表情に リネルは一瞬 息を止めた。
ヒソカは深く考え込むような表情には不似合いに、瞳だけがやたら怪しく光っており、きつく掴まれた手首が熱を持つような不思議な感覚を覚えていた。
「そうやって悩む顔をするキミをボクが本気で手に入れるとしたら」
「は?」
「どうすればいいだろう」
「ど、どうすればっ、て……」
「ズルい、と言えばいい?うらやましい、かな」
「い……意味がわかんない」
普段の軽い口調とは違い 独り言のように低い声で言うヒソカに、リネルは妙な胸騒ぎを感じていた。
「能力者としては然程の実力もない。どこにでもいる普通のコなのに」
「えっ……」
「玩具の1つくらいにしか思ってなかったし、特殊な能力があるわけでも戦闘能力が高いわけでもない」
「さっきから何が、言いたいの……」
「リネルってその程度なのに、ボクが何としても闘りたかったクロロと、ボクの中でイチオシのイルミの両方を手玉にとろうとしてる」
「そんなつもりは…………」
「さらにはその2人に……キミは大事に思われてる」
「……っ……」
「ズルいだろ。」
ヒソカはリネルの傷の残る頬を、あからさまに力を込めた手で掴んだ。
「嫉妬……と言うのかな?初めてだよ。こんなフクザツな感情を持つの」