第48章 追跡
クロロは目の前に並ぶ数点の品々に目を向けながら、促すように 声のトーンを上げた。
「どうだ?なかなかだろう」
「この前盗ったヤツ?クロロの趣味ってわかんないけどね」
イルミはそれらに目線を投げつつも、まるで興味がないような抑揚のない口調で返事を返した。
クロロはイルミに視線を移すと 腕を組み 微笑を見せた。
「お前は美術品に興味はないのか?」
「ないよ。希少価値は認めるけどね、売ったら金にはなりそうだし」
「ふっ、ビジネス以外では分かり合えんな。……まぁいい」
クロロは少し顎先をあげて言った。
「さっきも言ったがリネルはここにいないしオレはあいつがどこにいるかも知らない。まだ他に用でもあるのか?」
「うん。言っておこうと思うんだけど」
「なんだ」
「オレはクロロが本気でリネルを欲しがってるとは思ってない」
クロロは少しだけ眉を上げ、無言のまま イルミの言葉を待っていた。
「でもさ、記憶なくした時とか今朝の態度見てて思ったんだけどリネルが今後どう出るかわからない。それ次第ではクロロの意見も変わるかなって思うんだけど」
「……なるほど。それを確かめに来た、って事か」
クロロはまたも余裕の笑みを作る、少しの間を置いてから口にした。
「なら……良かったんじゃないか?リネルがここにいなくて」
「まあ、そうとも言えるか」
「仮にリネルがオレの元にいたら、お前はどうするつもりだったんだ?」
イルミは少しだけ目線を下げた。
「簡単にはいかないしヒソカもうるさそうだし乗り気はしないけど。クロロを殺る方向なのかな」
「オレが簡単に殺られると思うか?」
「だから乗り気はしないって。そんな事に時間や手間かけて仕事に支障出ても困るしさ」
「そこまで大事なのか、リネルが」
「大事だよ」
イルミは クロロを見ながらはっきりと答えた。