第48章 追跡
そのまま余韻に浸るように 自身の息遣いが聞こえる程に静まり返る空間に身を置いていたクロロは、ふと近付く気配に少しだけ目線を揺らした。
「………」
存在を主張するかのように、クロロは少し声をはって口にした。
「空いてるぞ」
「……」
入り口の重そうな厚い扉が軽がる開かれると同時に、イルミがその場に足を踏み入れた。
「見つけた」
「…イルミか」
一瞬だけ 振り返り肩越しにイルミを見た後、クロロは再び目の前に並べた宝に目線を戻し それらを見上げながら口にした。
「よくここがわかったな」
「まあね。仕事柄 情報集めはそこそこ得意分野だし」
「なるほど。で、何の用だ?」
「リネルはどこ?」
クロロはゆっくり振り返ると、不思議そうな顔で答えを返した。
「オレが知るか。記憶戻ったんだろ?よかったな」
「それを知ってるって事はリネルはやっぱりクロロの所なんだ、どこにいる?」
「記憶の件については今朝方連絡があっただけだ」
「リネルの携帯壊したはずだけど」
「その辺は詳しくは知らんが連絡あったぞ」
イルミはクロロに目線を向けたままに 携帯電話を取り出すと、その場でリネルへ電話をかけた。
クロロは口元を緩めると、からかうように言った。
「逃げたのか?リネル」
「かもね。居場所が特定出来ないし」
「ふ、教えてやろうか。躾の仕方を」
「その躾をこれからしようと思ってる。いいからさっさと教えてよリネルの居場所」
「知らんと言ったろ。逃亡ならお前の電話には出ないだろ、下手すりゃ既に着拒されてるかもな」
「それはされてないみたい。ま、された所で裏ルート洗って何が何でも引きずり出してやるけど」
イルミは、コール音のみが続きとられる様子のない携帯電話のOFFを押した。