第47章 恋話
食事を終えた後。
キッチンで皿を洗うリネルの横でヒソカは リネルが記憶をなくした時の事を一部始終説明していた。
リネルはそれを聞き、記憶をなくした時 当時最もクロロを慕っていた時期に戻っていた事を初めて知った。
記憶がない間に 何を喋ったかも定かではないし クロロに対する気まずい気持ちと イルミに対して多少なりの申し訳ない思いが胸をよぎった。
そんな複雑な顔をするリネルに、ヒソカが横から声を落とした。
「結局キミって誰が好きなの?」
「…、なんでヒソカにそんな事言わないといけないの?」
「相談に乗ってあげるって言ってるのに」
「ヒソカのいう事は信じちゃダメなんでしょ?そもそも私 イルミと結婚してるんだけど…」
「記憶なくした時の君はどう見てもクロロが好きだったと思うから」
「…」
リネルはしばし黙った後で小声で口にした。
「…別にいいでしょ。昔の事だもん」
「今は?」
「…今は別に…」
「前に言ってたねぇ、両方欲しいって。キミってズルいからどっちつかずでフラフラしてる」
「…」
「欲しいけど手は出せない、でも内心とっても大事だし忘れられないから 何かあるとすぐに心が揺れて迷っちゃう。そんな所?」
「…ヒソカってやだ。……ほっといてよ」
ぷいっと顔をそらすリネルに 確信を付くよう、ヒソカはハッキリと口にした。
「そんなにクロロが大事ならどうしてイルミと結婚したの?」
リネルは頭の中で答えを探るべく、間を置いてから素直な思いを語った。
「……わかんない。イルミはクロロと違って私をわかってくれないから苛々するし、育ちも考え方も違うからぶつかってばっかりだし。ほんとなんでだろう…」
「クク…そんなに好きなら…この際キッパリ振られてから仕切り直したら?」
「えっ…」
リネルは少し驚いた顔でヒソカを見上げた。
『振られてから仕切り直す。』
自分では考えもしなかった事であった。