第46章 家出
「リネルは明日も仕事でしょ?ちゃんと寝ないと良くないんじゃないの?」
「まぁ少しは眠くなるけどね。大丈夫」
「でも!」
「ん~…」
リネルは少し考えてから 笑顔でゴンに目線を投げた。
「ゴンて優しいね。じゃあ一緒に寝てくれる?1人でもいいけど ボディーガードがいたら尚更安心だし」
「え?オレはダメだよ!」
「なんで?」
「なんでって…だってリネルが隣にいて我慢出来なくなったら困るし」
「えっ、……?!………いたっ………!」
「大丈夫?!リネル」
ゴンらしからぬ言葉に驚き ふと手元を狂わせたリネルの人差し指を包丁が掠めた。
溢れる血液を溜息まじりに見ていると ゴンがリネルの手をとった。
「オレ変な事言ったかな?ごめんね」
「え?…ううん」
「血が出てる」
「たいしたことないよ」
「舐めておけばとりあえずいいかな」
「え、…、ちょっとゴン!」
躊躇なく指先を舐めてくるゴンに、 リネルは妙な気恥ずかしさから ゴンの舌先から目線をそらせた。
「大丈夫だから…」
「森で怪我した時はいつもこうしてたからさ!」
普段の笑顔を見せるゴンに、リネルは ドギマギした口調で言った。
「ゴンてさ、なんて言うか…、大人だよね、やっぱ…」
「え?なんで?」
「それとも天然?もしかしてわざと、とか…?」
「何の話?この家は絆創膏あるのかなぁ~」
「………、」
「………♡」
2人のやりとりをカウンター越しに見ていたヒソカとキルア。
ヒソカは、苦笑いを浮かべ口元をぽかりと開けているキルアに ニヤニヤしながら言った。
「ねぇキルア、ゴンとリネルこそ新婚さんみたいだと思わないかい?」
「うっせーな、別に思わねぇけど」
「ゴンて末恐ろしいねぇ」
「動物みたいなもんなだけだろ、ゴンは」
「将来がますます楽しみだな」
「そーかよ」
キルアはリビングのソファにどかりと座ると わざとらしく音量を大きくし テレビ画面を見つめた。