第46章 家出
部屋の飾り気は薄いが、家具や内装は小気味いいセンスがあるモデルルームみたいだった。時々不自然に原色カラーの物が置かれているが それもまた妙にアクセントにもなっている。
高層階なので景色は最高だった。晴れ渡る夜空には美しい月も浮かぶ。ゴンは目を輝かせて感嘆の声を出した。
「うわぁー すごい眺めだ」
「ゴンにそう言って貰えるとは、嬉しいよ♡」
「こんなに高いと天空闘技場を思い出すなぁ」
「ボク達の思い出の場所だね」
何やら恋人同士のような会話をしている二人の後ろで、リネルとキルアはキョロキョロ部屋を観察する。特におかしな所はないようだ。
ほっと息を付き、キルアはスマホを見ながらリネルに言った。
「腹減った~ もう19時過ぎだぜ」
「えっ もうそんな時間?」
「どうするよメシ」
「んー…何か買ってくる?」
「面倒。」
「じゃあ食べに行く?」
「だりぃ。」
「じゃあ、あっ ピザでもとる?」
「あ~ その気分じゃないんだよね」
リネルの顔からすうと笑顔が消える。声を低めて言った。
「ワガママじゃない?!キルア」
「あ?うっせぇ。オレは今食いたいの!」
悪気なく言ってのけるキルアはそういえば、あのイルミの弟だった、なんて当然の事実を目の当たりにした。
仕方なく 自身のスマホを取り出し近場で食事が出来そうな場所を検索しようとすると ヒソカが口を挟んでくる。
「ボクはリネルの手料理がイイな」
「えっ 手料理…?!」
つい、声のトーンが上がってしまった。ヒソカはこちらをからかうように 横目で表情を伺ってくる。
「そういうコトはイルミにしかやらないの?」
「イルミにする義理もないしやる気すらない」
「おっと失礼。キミはお飾りの奥サマだったねェ」
「…何か言い方がすごく癪に障る…」
「まァ 料理一つ作れなくてもボクはイイと思うよ」
「…やろうと思えば作れますけど料理くらい」
ついムキになりそう返してしまった。リネルとしては 家で粛々と料理をするよりもハンターとして生きることに価値を見出しているだけだと言うのに。
結婚前は一人暮らしも長かったので出来るというのは嘘ではない。
こうして、やや乗せられた感はありつつもリネルの意地の夕食作りがスタートすることになった。