第45章 客
いい黙るリネルをゴンは不思議そうに見る。リネルは口をぽかんと開け、感嘆の声を出した。
「ゴンて、大人だね。」
ゴンは驚きと共に手のひらを顔の前に出し、謙遜の声を出してくる。
「オレなんか全然!キルアの方がいつも落ち着いてるししっかりしてるし!」
「……今日はゴンに会えてよかったな」
忙しさ、面倒臭さ、煩わしさを理由に触れないようにしていた感情めいた事柄をこうもあっさり語られた事には、ぐうの音も出なかった。蓋をしておけばやり過ごせる不確定なものは話題に出すべきでないし、あれやこれやと複雑化するのも避けたい所ではあった訳だが。
リネルは目線を下に向け 冷めたコーヒーを口に含んだ。
「……そろそろその辺、はっきりさせないといけないのかも」
「え?」
「ううん、こっちの話。ありがとう、ゴン。少し前向きになってきた」
「そっか、よかったね!」
ニッコリ満足そうな笑顔を見せるゴンに、リネルも笑顔を返した。
「仲直りする気になった?」
ゴンは頬杖をつきニカリと歯を見せて笑いながら言った。その顔を見て、リネルは目を細めて 口角を上げた。
「それとこれとは別、私結構頭に来てるから。ねぇ、ゴンも今日私の家出に付き合ってよ」
「え、家出?リネル家出するの?仲直りじゃなくて?!」
派手に驚くゴンに、リネルは淡々と説明をする。
「だって私ばっかりが折れるのも癪だしさ。夫婦喧嘩したら実家に帰るのはセオリーでしょ?実は今日キルアを呼んだのもそのためなの」
「ん~…オレとしては早く仲直りしてもらいたいし気が進まないけど…」
「人数は多い方がいいし。ねっ?ゴンお願いっ!」
両手を顔の前で合わせるリネルに、ゴンは渋々といった顔を見せた。
「はぁ…わかった。どちらかといえばオレはリネルの味方だしね」
「ゴン、ありがとうっ!」
笑顔で礼を述べると リネルは携帯電話で時間を確認し、伝票を手に立ち上がった。
「私そろそろ仕事戻らなきゃ!キルアと合流して待っててね、仕事終わったら連絡するから」
「わかったけど…いいのかな?」
「ゴン!今日は本当にありがとうね」
「忙しないな〜リネルは…」
リネルは急ぎ職場へ戻り、仕掛かりの仕事に取りかかった。