第45章 客
リネルは近場の喫茶店にゴンを案内した。比較的ハンター協会とも近く、座席が半個室なのでちょっとした打ち合わせにも利用出来る場所だ。メニューを選ぶタブレット端末をゴンに手渡した。
「わざわざ来てくれたし何でも頼んで!」
「じゃあオレは〜ミルクティーとこのケーキにする」
「それだけ?ゴンは謙虚だねー キルアだったらきっと片っ端から頼むよ」
「じゃあ、あとこのパスタセットもつけていい?」
「うん。もちろん」
「あとこのチキンバスケットも」
「うん。どうぞ」
「あとはねー……」
リネルはさっそく注文を頼む。ウエイトレスが去るとゴンが少し身を乗り出してくる。
「キルアに聞いたけどリネル結婚したんだよね、おめでとう!ゴメンね、お祝い言うの遅くなっちゃって」
「あ…………うん、ありがとう」
今は言われても正直あまり嬉しくないお祝いの言葉だった。思わず今朝方のイルミとのやり取りを思い出してしまった。無意識に眉が寄る。
「レオリオがすごくショック受けててしばらく酷かったんだよ。だいぶ飲み潰れてたみたいだし」
「え?そうなの?前に会った時はケロッとしてたけど……」
「クラピカもおめでとうって伝えてって言ってた。やたら心配してたけどね、リネルの事」
「そっか……」
懐かしい面々の名前が出ると過去のハンター試験が懐かしくなる。あの頃は試験官見習いで、あれこれ雑用の手助け係をやらされていたものだ。
「お待たせいたしましたぁ」
届いた料理を口に運ぶゴンの向かいで リネルは足を組み、砂糖も入れないブラックコーヒーをちびちびと口に運んでいた。
しばらくは黙々と食事をしていたゴンが、上目遣いにリネルを見つめて言った。
「リネルさ、……今日はなんだか怒ってる?」
「えっ」
「急に来たの、やっぱり迷惑だった?」
「あ、いやっ……」
リネルはコーヒーカップを置くと素早く首を左右に振った。ゴンの眉は心配そうにしゅんと落ちている。
「まさか!ゴンが来てくれたのは本当に嬉しいよ」
「そうなの?」
「……ごめんね、イライラしてて。実は今朝揉め事って言うかケンカっていうか、いざこざして……」
「え?!そうなの?だから傷だらけなの?」
「それはまた違うんだけどね……」