第44章 喧嘩
キルアはすぐにリネルの背中を追ってくる、後ろから話しかけられた。
「リネル、記憶戻ったんだろ?いきなり出て行ったかと思ったらどうしたんだよ」
「……キルアのおかげで命拾いした。ありがとう」
「殺気はなかったケド。何かされたのか?」
「今の所は…………何も」
つい先程に見せられた圧倒的オーラを放つ針先を思い出し、リネルは背中に冷たい汗が流れるのを感じた。悪寒がする、とはこういう事を言うのだろうか。
キルアは、怒りとも恐怖ともとれるリネルの表情を隣から伺い声をかけた。
「あとこれミルキから。リネルの携帯、ちゃんと復元出来たってよ。請求書はメールしとくって」
「え……」
「壊されたんだろイルミに。ほら」
差し出された携帯電話を両手で受取った。リネルは感涙を覚える思いでキルアを見る。
「キルアもミルキも…優しいね…本当にありがとう」
「いや、大袈裟だろ」
「今の私…優しさに飢えてるから…」
「イルミのせいだなそれ」
「期待もしてないしいいのもう。でもキルアのさっきの念凄かった、痺れちゃったよ色々な意味で…まだヒリヒリするし」
「わり、一応手加減したつもりだったけど。つーか冗談言ってる場合か?」
キルアはリネルからするんと視線を外し、少し先を歩いた。
そんなキルアの背中を見ながらリネルはぽつりと口にした。
「……ねぇキルア、今日ちょっと私に付き合ってくれない?」
「あ?何に?」
振り返るキルアに、リネルはきっぱり言い放った。
「家出する。イルミが私の事を理解してくれるまでは帰らない」
「は?!」
「そういう訳でよろしく。後で連絡するから!」
「おい、リネル!」
リネルはそのまま廊下を急ぐ。振り返らずにゾルディック家を出た。
道中、復元された携帯電話を確認するとミルキからの請求書とクロロからのメールが入っている事に気付いた。クロロのメールをすぐに開いた。
無題
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大丈夫か?
携帯復旧したらとりあえず一報入れろ
どうしてもヤバくなったらまた連絡しろ
「……ヤバいよめちゃくちゃ。タッチの差だよ……っ」
まるで愚痴同然に、リネルはクロロに返信をし仕事への道のりを急いだ。