第44章 喧嘩
「な、……何を言い出すの……?急に……」
「今はオレが質問してる。どうなの?」
「……別に、好きとか、そういう訳じゃ……」
「昨日オレに黙ってたよね。クロロ、というか幻影旅団と知り合いだった事。なんで?」
「なんで、って…………言う必要が、ないと思った、からで…………」
昨日何があったかわからない事には言い訳も説明もしようがないではないか。こういう時のイルミは自身が納得、もしくは妥協出来る範囲での提案を持ち込まない限り自らは引かないだろう。
事情がわからぬこちらには武が悪いが、白旗を上げるのも腹落ち出来ない。負けじとイルミを睨み返しながら 言い放った。
「……昨日何を聞いたかどこまで知ってるのか知らないけど、とりあえず私は状況を知らないんだから急に言われてもこっちも意味がわからない!教える気ないならもういいから携帯だけ貸してよ!!」
イルミはますます声を荒げるリネルを、静かに見下ろすままだ。
「クロロの事もだけど、昨日は幻影旅団の存在をオレに隠してた。仕事の妨げになるかもしれない可能性を隠すってどういう事だかわかってる?」
「それは…っ…」
「ウチへの裏切り行為にも相当するよね。てゆーか幻影旅団ってどういう集団だか認識してる?友達感覚で付き合ってていい連中じゃないんだよ」
「…確かに…世間的にはそうなのかもしれないけど。私にとっては、古い友達と言うか、みんなそう言う存在で……」
リネルは下を向き、少しづつ声を小さくする。
イルミは一歩でリネルに近付くと片手をリネルの髪に伸ばした。そっと、しかしそれなりの力で、うながすようにリネルの不安気な顔を上に向かせた。
「っ……」
「リネルは自らリスクを犯すようなことばかりする」
「そんなつもりは…もう少し私の事信用してよ…干渉されるのも抑制されるのも…うんざりなんだよ」
「出来るわけないよね」
イルミの掌が首元に伸びた。ずきりとそこが痛むのは昨日の傷があるからだろうか。上に登る掌はそっとリネルの輪郭を取る、イルミの顔が落ち尖る鼻先までが近付いてくる。
頭部を上下から固定される中、リネルは抵抗するようきつく目頭を寄せた。