第44章 喧嘩
「昨日の報酬は8割カット、プラス迷惑料として5千万。オレの指示に従わない上に面倒をかける始末、当然だよね」
「ちょっと待ってよ!……それはヒソカが、ヒソカが急に私に襲い掛かってきて……っ」
必死に弁明をするリネルの話を イルミは腕を組みながらきいていた。イルミの雰囲気は芳しくないし、情状酌量の余地はあるのかもわからないが可能な限りの説明をするしかない。
「リネルの言い分はわかったよ。まぁそれに関してはヒソカがいたのに気付けなかったオレのミスでもあるしね」
「で、何があったの?あの後」
「話すと長いんだし説明料、振込んでよ?」
「ふざけないで……ッ!!!」
表情を崩さぬまま毅然と言い放つイルミに向かい、リネルは声を荒げた。仕事の同行時に記憶を失うむしろ被害を被ったのに、何故その説明の為に金を請求されなくてはいけないのか。痺れを切らしリネルは部屋をキョロキョロ見回した、そして苛立ちの声を上げた。
「私の携帯知らない?!」
「あ、昨日壊した」
「はぁ?!?!」
「自業自得だろ。リネルの」
イルミを思い切り睨み付けた。リネルはイルミに片手を差し出し、棘のある口調で述べた。
「貸して。携帯」
「いいけど、どうする気?」
差し出されたイルミの携帯を奪い取るように手を伸ばした、リネルは目も合わせずに早口で言う。
「クロロに訊く」
「…………」
「旅団に会ったんなら……クロロともどうせ会ったんでしょ。ならクロロだって昨日の事情を知ってるだろうし。もういいよ、昨日の事は全部クロロに教えてもらうから」
「クロロクロロってうるさいね。……昨日から」
イルミは声を低くする、黒い瞳の目元を一気に寄せる。話し方だけは普段の通りに落ち着いていた。
「これも訊こうと思ってた。リネルってクロロの事好きなの?」
「え…………………っ」
想像をはるかに超える唐突すぎる質問だった。リネルは、携帯を奪い取ることも忘れ目を大きく見開いた。