第43章 夜遊び
「記憶喪失?」
「はい……」
その後、3人はテーブルにどっさりスナック菓子と炭酸ジュースを並べ、ソファに腰掛け話し合っていた。
部屋の主はともかく銀髪少年もよく食べる、リネルはちびりちびりとだけ手元のジュースを口に運んでいた。
「どうりでなんかきょどってんだ今日のリネル、夜の散歩とか意味不と思ったけどよ」
「つーか顔ヤバくね?またイルミとケンカ?」
「……えっと。そんなに仲悪いんですか?私とイルミさんて……」
愛のない利害結婚に加えて喧嘩が耐えない夫婦不仲とはさすがに未来が絶望すぎる。不安な顔を見せるリネルに、ミルキが返事を返した。
「仲悪いっつーか根本的に性格が合わない気がする」
「そうなんだ……」
「だっからオレは言ってんじゃん!他にもっとイイのいんだろって」
きっぱり言い切るキルアの言葉はぐさりと胸に刺さる。リネルはクロロの顔を思い浮かべた。
クロロが自分を受け入れてくれるかはわからないが、不毛であっても一縷の望みを託せる片想いの方がよほど人生に生きがいを持てたのではなかろうか。
自分の膝あたりを見つめながらリネルはぽつりと口にした。
「……私って、イルミさんのどこが好きなんでしょう……」
「いや、知らねーけど。顔とか?」
菓子を口に運びながら適当に言うミルキの言葉をつい真に受けた。リネルは少しの間を置いた。
「顔……なんとも言えないなぁ、タイプかっていうとそういう訳でもないし……悪くはないとは思うけど……」
「評論家か、何真面目に答えてんだよ」
「あ、オレわかった!強さじゃねえの?」
お次は、炭酸ジュースのペットボトルを豪快に口に運ぶキルアが適当に言う。リネルはパーティー会場でのイルミの様子を思い出していた。
「強さ……見るからに剛力屈強というよりはなんかこう……陰湿そうなクセある強さは感じるけど。態度的には強そうというか……“我が道をゆく不動の精神”って感じですよね……」
「なんかウケるな、今のリネル」
「あ!そうだ!私今の強さで思い出した」
リネルはポケットに手を入れる、そこから壊れた携帯を取り出した。