第43章 夜遊び
案内された部屋はパソコン類の機器に溢れ規則的な機械音が響いていた。部屋の一角には、所狭しとフィギュアが並んでいる。
小気味よいくらいにオタク感丸出しなのに 何だか甘い芳香剤のような良い香りがする点が解せなかった。
「入らないの?」
「あ、入ります!」
部屋に足を進める。リネルは入り口横の大きなテレビ画面近くに置かれたL字型ソファを指差された。
「しばらくその辺で静かにしてろよ」
「……うん」
部屋の主はそのままパソコンの前に座り込み、指だけをカタカタ激しく動かしだしてしまう。リネルは身を小さくして腰を下ろし、キョロキョロ部屋見渡していた。
部屋にノックの音が響く。同時に銀髪の少年がひょっこり顔を出してきた。
「兄貴ーなんかゲーム貸してー」
「うるさいキル、今大事なとこ。邪魔すると殺す」
「はいはーい。……ってリネル?!何してんのこんな所で」
「えっと、ね……」
登場人物が増えてくるとさすがに身の振り方がわからなくなってくる。驚きの声を出す少年に向かってリネルはそれらしい事情を述べた。
「ちょっと寝れなくて……ええと、人生についての深い語らいでもどうかなぁ~とか、思って……」
「ミルキと?ここって人生諦めてるヤツが住む部屋だろ、ゲームとフィギュアくらいしかねーぞ?!」
怪しむ目付きで見てくる少年としばし会話を取り繕っていると、部屋主が目的を果たしたのか満足そうな顔で近づいて来た。
「ミッションクリア。で?お前ら何しに来たんだよ」
「だーかーらー ゲーム!何か新作ねえの?」
「今はない。あっても先にやらせるワケないだろ。リネルは?何しに来たんだっけ?」
「……ええと、実はですね。私……」