第43章 夜遊び
「……全然眠れない」
その後、部屋の明かりを消しベッドに横になってはみたものの、リネルの上下の瞼は一向にくっつく気配がない。
部屋にあった本を読んでみるもどうにも集中出来ず、暇潰しに最適な携帯電話は壊され、テレビをつけてみるも興味を引かれる番組がやっていない。
仕方なしにベッドに横になるが眠気が全くと言っていいほどにない。
ついにリネルは部屋のドアを開ける、しんと静まり返る廊下を左右に見渡した。考えてみれは現在の自分はこの家の一員だ。常識を外れる行動をしなければさして問題ないはずとタカを括る。
気休めに壊れた携帯電話を忍ばせ、薄暗い廊下をゆっくりと進んで行った。
ふと、前方に人の気配がある、リネルは足を止めた。えらく巨漢なその人物は敵か味方か、見極めるよう前方に注意を向けていると件の人物は驚く様子もなくリネルに話しかけてきた。
「何してんの?」
「ええと……夜のお散歩に」
「は?」
明らかに怪しむような顔つきで細い目をぎろりと向けられる、リネルは目線を下に逃がした。また問い掛けが続く。
「またイル兄とケンカ?」
「え……」
「ズタボロじゃん 顔」
「まぁ……」
「鬼畜だな、あいつ」
この度の怪我の原因はイルミではないらしいが、「またケンカ」とは夫婦のいざこざは日常茶飯事なのだろうか。苦笑いを浮かべてから、リネルも質問を投げ掛けた。
「そっちこそ、何してるの?」
「食料調達」
「こんな時間に?」
「これから欲しいフィギュア落札するから」
「…………へぇ」
彼は天下のゾルディックの一員なのかどうなのか、あまりにも想像外の答えには苦笑いが深くなるばかりだ。先ほど兄と言っていたし何となく、纏うオーラがイルミに似ていなくもない。
おそらくはイルミの弟なのだろう。この人物から何か記憶を辿る糸口があるかもしれないし何より部屋で1人でいるのは退屈でもあった。リネルは伺いを立てるべく少し首を傾げた。
「ねぇ、私も行っていい?」
「え?リネルが?オレの部屋に?」
「うん、眠れなくて。お喋りでもしようよ」
「……まぁいいけど。邪魔するなよ」
「ありがとう」
リネルは左右に大きな背中についていった。
「どーぞ」
「……わ……」