• テキストサイズ

〈H×H 長編〉暗殺一家の嫁

第42章 電話


「…うっ、……っ…ッ」


ふとイルミの力が弱まった事に気付き、薄く濡れた目を開けた。イルミは無表情のままこちらをしげしげと見下ろしていた。

「まぁいいや。その辺は記憶が戻ったら今日の迷惑料と合わせて清算させるし」

「…っ…」

瞳をじっと覗かれる。リネルは再び緊張の表情を見せた。

「別に泣かすつもりじゃなかったんだけど」

「……」

「そういえばリネルの泣いている所は初めて見た」

「……それは、……いきなりこんな事されたら、怖いし……」

「あ、ヤってる時はたまに泣いてるか」

「…………、…………」

その後イルミはあっさり身体を起こしソファから立ち上がった。
リネルもすぐに起き上がり、思い切り軽蔑した面持ちで イルミを見据えた。

「いいよ、警戒しなくて。オレはまた出かけるから」

「……、どこ行くんですか?こんな時間に……」

「仕事」

正直ホッとする。しかし先程も仕事で深夜は深夜でまた仕事、その多忙さには疑問も残る。

「さっきも仕事だったんですよね……?忙しすぎじゃないですか?」

「そう思うなら余計な手間掛けさせないでよ。今のリネルに言っても無駄だけど」

「……すみません……」

「それにリネルだってかなりの仕事人間だと思うケドね」

去り際は実にあっさりだ、イルミは部屋の入り口まで足を進める。ドアノブに手を掛け、静かに部屋を去ってしまった。



「…………っ…………はああぁ」

リネルはようやく、安堵するように大きく息を吐いた。 未だ収まらない心臓の不安の音を落ち着かせるように、膝に顔を埋めた。


/ 497ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp