第41章 帰宅
愛はないにしても仮にも夫婦だ。こういった事情も別に普通なのかもしれないが今のリネルにはあまりにも急展開だ。一気に顔に熱が集まってくる。反射的に瞳を細くした。
「眼球にまで傷がついてる」
「……え……」
「顔も酷い、帰ったらまずは傷の手当かな」
「………………」
イルミはそう言うとあっさり手を放し、元の位置に座り直してしまった。
とんだ誤算、ただ傷の度合いを確認していたとは。リネルは変な想像をしたことを誤魔化すよう 目線を下に向け、バクバクうるさい心臓の音を聞きながら膝の上で両手をきつく握りしめた。
「したかった?」
「え?!な、なにが ですか……?」
「リネルが頭の中で想像してたコトとか、色々と」
「いろいろ?!いろいろって、なんですか……?!」
「聞く?」
「や、いや!いいです!!!!」
からかわれているのかどうなのか。どこまで本気かもわからない気まずい質問はつくづく勘弁願いたい。車中はまたも静寂に落ちてしまった。
「リネル、オレも一つ聞いていい?」
「……はい」
イルミの方から質問を投げかけられた。リネルは再びイルミの横顔を見る。
「どうして入らなかったの?幻影旅団」
「……え」
「誘われたって言ってだだろ、クロロに」
「……ええ」
言われてみれば、何故なのか。ずっとクロロの側で生きてきたのに その誘いを受けなかった理由については、自分の中でもハッキリした答えを持ち合わせていなかった。
リネルは一呼吸おいて 自ら回答を探るようゆっくりと口にした。
「……自立、したかったんだと思います」
「自立?」
「はい。当時はまだ子供だったけど、いや子供だったからこそ、もっと広い視野が欲しくて……自分1人でも生きていける力が欲しかった。…の かなぁと…」
「なるほどね。その自立心の強さが今みたいなひねくれた性格を作っていったワケか」
「……ひねくれてるんですか?今の私」
「結構、いやかなり、かな」
「そ、そうです、か……」
イルミが訊きたい真意は何なのか、咎められているのか、それすらもよくわからなかった。