第4章 報告
ククルーマウンテンのゾルディック家の屋敷内。
広いダイニング空間には香ばしい茶葉の香りが立ち込めている。
父の隣に、母キキョウが音もなくアンティーク調の椅子へ座り込んだところを見計らい、イルミは声をかけた。
「オレ 結婚しようと思うんだよね」
まず返ってきたのはガチャンと物が割れる音だった。シルバはあからさまに眉を上げ、キキョウは目の前にあった銀細工入りのティーカップを無残にも叩き壊していた。
「な…どういうこと…?!どういう事なのイルミ!?」
「この間の見合いの子のことか?」
「違うよ。てゆうかアレは断っただろ」
「どこの誰なの?!イルミ 説明なさいな!」
キキョウは細い顎を引き真っ直ぐこちらへ質問を浴びせてくる、これは想像通りの剣幕である。
だが正直な所 リネルのプロフィールも経歴も、詳しいことは何も知らないのだが素直にそんな事を明かせばまた面倒になるだろう。イルミは表情を崩さぬまま、知りうる情報でその場を取り繕う。
「ハンター協会で働いているコでさ。シングルライセンス所持者で実力よりも小回り派、うまく立ち回っているそこそこ器用なタイプ」
「なっ……ハンター協会ですって?!?!」
「うむ。」
シルバは考え込む表情を見せる。
こういう時 父から得られる回答は悪いものではないケースが多い、イルミはなんとなくそう悟る。鋭い視線が向けられた。
「なるほど。条件としては悪くはないな」
「だろ?」
「稼業を営む上で、否応無しにハンター共とは関わることにはなるからな」
なにやらキーキーと横やりを入れてくるキキョウを無視し、シルバとイルミは話を進める。
暗殺を生業とするゾルディック家にとって、ブラックリストハンターの存在は時々厄介な場合があるのは周知のこと。ハンター協会にコネクションが出来たとしたら そこから現存のブラックリストハンターの情報が取れる、これはゾルディックにとっても大きなメリットのある話と言える。