第3章 決断
「…さてはあのキスマーク、テストだったの?」
「犯人をオレだと決めてかかったってことは今は特定の相手はいないってことだよね?」
「………」
「リネルの場合仕事が恋人ってヤツか」
「それイルミに言われたくない」
リネルは大きく咳払いをする。話を仕切り直すべく、たびたびイルミの顔を見上げて言った。
「確認だけど身内になったら当然これからはタダで仕事受けてくれるんでしょ?」
「それはないよ。仕事に関しては今まで通りきちんと請求する」
「えぇ?!」
「当然だろ。ウチではそういうルールだよ」
「嘘……」
「リネルの生活費くらいはオレが稼いであげるから」
「…それはいいから依頼をまけてよ…」
「仕事は仕事、だよね?」
イルミの表情は緩まない。彼にとってはこれも一種の組織間協定に過ぎないのだろう。リネルはふうと息をつく。
「厳しいね、現実は…」
「今まで通りだよ。結婚してもオレ達の生活は何も変わらないんだから」
「……冷たいなぁ」
「じゃあやめる?結婚」
「……やめるって言ったら?」
「もう少し説得を試みてそれで無理なら仕方ない」
「…仕事面に関しては譲らないんだ…」
この結婚は前途多難で意気揚々。
なぜだかそんな予感がした。