第41章 帰宅
「イルミさん…やっぱり、帰るんですよね…?」
「そう言わなかった?」
「はい、わかっていますが…」
「迎えも来てるから。早くして」
その後、リネルの希望も虚しく その場にいた一同は皆、帰路へ向かう方向で話しが進み出していた。イルミは一人さくさく部屋を後にしてしまう。
あれから部屋には幻影旅団の面々も集まってきた。懐かしい面子としばし会話を楽しむ事は出来たものの これから先、それぞれが帰る場所は違う訳で 益々寂しさがこみあげてくる。
幻影旅団は本日目的のお宝を無事にゲット出来たとのことでワイワイ盛り上がっているし、ますます蚊帳の外にされた気分だ。
リネルはメンバー達と談笑しているクロロの後ろ姿を見る。その姿が何故かとても遠い。事実、今の自分は別の男性と結婚しているらしいし、大切に大切に秘めていた真っ直ぐな気持ちを 未来の自分にも全否定されるようで、胸がつぶれそうになる。
「そんな顔してるとバレバレだよ」
「ヒ、ヒソカさん?!バレバレって、何が……」
「クロロのこと好きなんだ」
「……………………」
そう指摘されたリネルの反応は想像以上にわかりやすかった。一気に頬を紅潮させ瞳もうっすら潤んでくる。ヒソカとしては毒気を抜かれる程の裏表のなさには、からかうつもりも面白みがない。上背のある背中を折り、ほんのりリネルに近づいた。
「イルミはヤキモチ焼きだから気をつけて」
「え?!」
「どうしても困るコトがあったらボクの所においで。今日の罪滅ぼしにかくまってあげる」
「……!」
目の前にははらはら一枚のトランプが舞う。リネルはそれをを両手で受け取った。ヒソカはすんなり身をひるがえすと 部屋の窓枠から夜の闇に消えてしまった。
クロロがこちらの様子を拾い近づいてくる。
「色々と急展開でお前も混乱していると思うが」
「…うん」
「今夜はイルミの元へ帰れ。それが最も得策だ」
「…そうは思えないんだけど」
「お前の記憶が戻った後の話をしているんだ」
「…………」