第40章 試行錯誤
「記憶喪失だと?」
「そういうコトみたい」
あれから。部屋にあったテーブルを囲うソファに腰掛けた4人は、ヒソカから リネルが記憶喪失に至るまでの説明を聞いていた。
ヒソカは自分には非がないよううまく話を脚色して述べるが、その真意を語れる者は残念ながらこの場に居合わせていない。ヒソカの話から現状を推測するしかなかった。
「私、上から落ちたんですね……」
「ウン、それで頭打ったみたい。とにかく記憶を戻さないとね」
「はい……」
リネルは当然の如くクロロの隣に座っている。イルミはリネルの様子を見る。
本来のリネルが今の状況に立ったとしたら、まず本日の依頼主であるこちらへのご機嫌伺いと言い訳の用意が先、リネルは面倒事を避けたがるそういう女だ。なのに今の状況はリネル自ら、事をどんどん大きくしているとも言える。ただ、今のリネルに聞いた所で埒が明かないので、イルミとしてはクロロに問いかけるしかない。
「クロロ、さっきの話本当なの?リネルを旅団に誘ったっていうの」
「ああ、今更隠す事でもないしな。お前はリネルからオレの事は何も聞いてないのか?」
「うん 一切の初耳だね。因みにさっきのアレってやつは?」
「そういう経緯だ。昔話に花が咲いただけだ」
リネルは何故、クロロとの、幻影旅団との関係をあえて隠しているのか。これでは裏事情を詮索するなと言われる方がおかしいくらいだ。無意識に、イルミの視線がリネルに向く。
逐一イルミから飛ばされる不穏たっぷりのオーラは気味が悪くて仕方なかった。リネルは下を向いたまま上擦る声で言う。
「あの…よ、よくわかんないんですけど、今は…記憶!とりあえず私の記憶の話ですよね?!」
「ウン。そうそう、でもなんでリネルはクロロの事だけ覚えてるのかな」
「確かにだ。お前が知ってる事をまず話せ リネル」
横からはクロロの視線が落ちてくる。リネルは記憶を探りぽつりぽつりと話し出した。