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〈H×H 長編〉暗殺一家の嫁

第40章 試行錯誤


「クロロ…………!」

リネルはクロロの前まで足を進める、クロロの両袖を掴む勢いで下から縋る目を向けた。クロロはふわりと眉を上げる、この状況下でのリネルの行動には解せないものがあるし意図がさっぱりわからなかった。

「今日のお前は百面相か?」

「え?」

「先ほどは神妙な顔をしていたかと思えば、今は随分傷だらけだな」

「この傷は……私もよくわからなくて。でもクロロがいてくれて良かった、私も何が何なのか……」

ヒソカだけが低く喉の奥を鳴らす。今のリネルには明らかにクロロ以外は目に入っていないようだ。ヒソカがそれを指摘した。

「クロロの事だけはわかるんだ。何故?」

「何故って、わかるよ。クロロの事はよく知ってる。クロロとはずっと一緒にいたし!幻影旅団が出来た時だって誘ってくれたり、他にもクロロとは色々……」

はっきり言い切るリネルの声は軽く高い。イルミの視線が一気にクロロに飛ぶ。

「クロロ、リネルの言ってる事本当なの?」

「彼女を蜘蛛に誘ったってのはボクも初耳だけど」

クロロとしては状況が飲み込めないままだ。
先ほどのリネルはむしろこちらとの関係をひた隠しにしていたにも関わらず 何故今は自らそれを露呈しているのか。巻き添えはごめんだと言わんばかりにクロロはため息を落として見せる。

「リネル昔の話だろ。今更何故そんな事を言い出すんだ」

「今更って、別に私は」

「…………さっきのアレのせいか?」

「さっきの、アレ?」

「いや。いい」

「何?さっきのアレって、何かあったの?ねぇ」

「状況考えろ。少し黙ってろ」

クロロは声を低めてぴしゃりとリネルに言い放った。リネルはようやく口を閉じ、しゅんと小さくなる。

クロロからすればえらく面倒だ。こちらの会話や仕草の全てに意識を集中してるであろうイルミの視線には正直緊張感を強いられる、つくづく勘弁願いたい。この場が面白いのはやはりヒソカだけである。

「リネルはクロロにはとっても従順だねぇ」

「なに、クロロ、さっきのアレって」

「それ以前にリネルの様子がおかしいだろう。まずはそこからだ」


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