第39章 喪失
さらに扉が開けられる。3人の視線がそこに集まった。
4人目の来訪者であるクロロは 驚く様子もなく部屋をぐるりと見渡した後、こちらまで足を進めてくる。素早く腕を組み、その場の状況を推察し始めた。
「やはりお前らか。ゾルディックはともかくとしてヒソカ、お前はここで何をしている」
「ちょっと噂を耳に挟んで遊びに来ただけだよ。もうお宝回収は終わりかい?」
「それも知っていたのか?オレ達はあと少し、セキュリティが厳しくて今それを総出で崩しにかかっているところだ」
ヒソカの手元にはいつの間にかまたトランプだ。流麗に流れるカードを遊ばせている。横からはイルミが口を挟んでくる。
「クロロがいるって事はやっぱり幻影旅団だったんだ。誰かこそこそしてると思ってたけど」
「お前がだいぶ片付けてくれたお陰で動きやすかった、礼を言うぞイルミ」
「なら少しは手伝ってくれたら良かったのに。ま、こっちはもう仕事終わったけどね」
ヒソカに寄り分けられたカードはいつの間にかジョーカー1枚になっている。それを差し出しながらヒソカはイルミに問い掛けた。
「そうだイルミ、面白い能力者いたかい?」
「あ、ヒソカはそれ目当てだったワケね。それらしいのはいたけどね、相手になるレベルでもないしもう殺っちゃった」
「残念♡」
目の前で繰り広げられる物騒なビジネス会話の意味は、リネルには全くわからなかった。口を挟むことも出来ずにじっと黙っているしかなかった。
最後に入って来たクロロをちらちら見ながら、会話の切れ目を待っていた。クロロを気にするリネルの様子を一番に拾ってくれたのはヒソカだった。
「登場人物が多くて混乱しちゃうかな、この人はねぇ」
「知ってる。私、クロロは知ってるよ…………」
またも急展開。
一同の視線が、一気にリネルに集中した。