第38章 襲撃
ヒソカはリネルの頭を少しだけ引き上げる。身体を屈めて リネルの耳元に唇を寄せた。
「リネル マナー違反だよ。真剣勝負の最中に逃げ出そうなんて」
「私はそもそも、こんな事、してる場合じゃ、ないし…」
「ツれないなァ……」
「?!」
ふと、身体が密着する。
後ろからあからさまに下半身を押し付け、ドレスのスリットの間にするりと片手を差し込まれた。 尻には何か良からぬモノがぶつかっているし、太ももの上部までを撫でてくる様には思い切り鳥肌が立つ。
「な…なにすっ…、……??!!!」
ヒソカの手を止めようとそこに自身の手を出そうとする。
が、それは叶わなかった。
ここで初めて、両手両足までもバンジーガムでがちがちに固定されていた事に気付いた。
ヒソカの片手が下から雑に顎を掴んでくる。上を向くようきつく持ち上げられると、またも視界がぐらんと大きく変わる。
「次はドコを塞ごうか」
「……っ……っ」
「怖いかい?抵抗出来ないコを凌辱する趣味はないから安心していいよ」
「……ひッ……」
目の前が、ちかちかした。
それはまたたく満天の星空のせいでは決してなかった。
眼球すれすれに差し出されるのは尖った爪と、カードの角だ。
「惨殺する趣味はあるかもしれないけど」
この男は有無を言わせぬ欲望の塊だ。どうやってこの展開を脱すれば良いのか、もうわからなくなっていた。
「キミの選択肢は2つ。ボクと遊ぶか、ココで死ぬか。賢明なキミならわかるよね?」
「………」
「ホラ、ボクはもうこんなにガマンの限界だよ。早く決めてくれないと、……手が滑っちゃうかも」
「………………!」
右目にじくりと圧迫感を得る、自らの血が滲みてくる。
リネルは掠れた声で言った。
「……わかったから。念を外して……これじゃあ動けない……」
「もちろん」
ヒソカはバンジーガムを解除する、リネルの身体を軽々と抱き起こした。