第38章 襲撃
にこりと、邪心たっぷりにほほ笑んだ後、ヒソカはリネルから距離をとる。ようやく解放された身を落ち着けようと、リネルは深く息をする。
「私は仕事で来てる。遊んでる場合じゃないの!」
「これは真剣な遊びだよ。“命をかけた”……ね」
ヒソカの手元にはトランプが数枚だ。
時間稼ぎどころではなく、命を守ることを余儀なくされてしまう。
「そろそろお話はお終い。これ以上焦らすなよ」
「………」
「じゃ、イくよ♡」
「…………ッ!!!」
急展開にも程がある。しかし考えている余裕はない。
ヒソカのスピードと力は圧倒的だった。
「くっ……!!」
いきなり殴りかかってくるヒソカの攻撃を両手でガードしたかと思えば、構わず足で蹴り上げられる。リネルは咄嗟に ヒソカの膝に片脚を乗せそこを蹴り上げ、ヒソカから距離をとった。
間髪を入れずに飛んでくる数枚のトランプを何とかかわすが、崩れた体制からでは全てはよけ切れず 幾つかリネルの身体に傷が走り血が流れていた。
一旦止む攻撃の合間にヒソカを見れば、至極楽しそうな顔付きをしていた。
「最初の一撃、よく止めたじゃないか。案外怪力だね」
「どっちが?!骨が折れる手前だよ!!」
リネルの両肘は先程の衝撃でビリビリと痺れ、次に同じ攻撃をされるとさすがにガード不能だ。しかし こんな攻撃を一発でもまともに食らえば致命傷になりかねない。
焦る、焦り。今はそれだけだ。
仕事とは関係のないシーンで何故こんな事になっているのかとふと冷静になるが、変に乗り気であるヒソカを説得できるとも思えないし、頼みのイルミは別件対応中である。リネルにすら応戦を頼んでいた事から推測すると、おそらく簡単には手が離せない状態なのだろう。クロロをはじめとする幻影旅団も、仕事で来ているためあてにはならない。
しかし、ここで派手に戦闘をしていれば誰かしら気付きはするであろう、その助太刀を頼りにすべく、とりあえず今リネルにできる事は 何とか致命傷を避け続けることだった。
「じゃ次、イくよ」
「……ッ!!」