第38章 襲撃
「えっと…イルミは現在43階の北側の……どんだけ高さあるの~この屋敷」
言われた通りリネルはゾルディック家の無線機が示すコードに従い、クリスフォード邸の上階に忍び込んだ。
人の気配や見張りはそこそこにあるものの、下のホールに比べればしんとした静寂な空間だった。リネルはなるべく音を立てぬよう、イルミの元へ足を急がせる。
屋敷の見張りをかい潜りかなり上り詰めた。途中、天井の高い吹き抜けのような場所に出る。顔が映る程に磨き上げられた大理石の床が美しく、周りは大窓で広々している。そっと足を進めると華奢なヒールが微かな音をたてる。
姿は見えないが微かにオーラが漏れる。
よく知る気配を感じ、リネルはぴたりと足を止めた。
「………!!!」
急に仕掛けられた攻撃は鋭利なオーラを流々まとう数回のトランプカードだ。リネルは身体をひらりと浮かせ ギリギリにそれを避け、隅の柱に身を寄せた。少しかすったようで頬にはビリビリと鈍い痛みが走り、鮮血が伝う。
床に刺さるカードを睨んだ後、それを投げ飛ばした主に対しリネルはきつい目を向けた。
「イイ反応だ♡」
「…ヒソカっ…」
ヒソカはいつもの余裕綽綽の表情を見せ、ゆらりとリネルに近付いた。
「酷いねリネル、こんなに楽しいイベントの日にボクだけ仲間外れにするなんて」
「…何の話…?」
「とぼけるなよ」
簡単に間合いを詰めるヒソカは、リネルの真正面に回り込む。
手首を掴まれ柱に身体を押し付けられた。背中にはずきりと衝撃が走る、リネルは目を細めヒソカを見上げた。
「今日は蜘蛛もいるしイルミもいる。だからここではボクには会いたくなかった……違うかい?」
「……っ」
ヒソカの恰好はまるでパーティー客だった。今までずっと下で見張ってはいたはずだが、ヒソカらしき人物は一度も見た覚えがない。リネルは思考を巡らせた。手首をきつく握られると骨までが軋む気がする。
「……いつからいたの?てゆーか、いつからこっちに気付いてた?」
「最初から。変装の名人はイルミだけじゃない」
「……っ」
「……リネル、罰としてボクのお願いを聞いてよ」