第36章 嫉妬
「……もういい、否定はしない。みっともないでしょ、笑いたきゃ笑えば?」
「いや、まあいい。 “愛しの旦那”か……随分サマになってきたじゃないか。暗殺一家の奥方も」
「……今日はそう言うのを求められてるからそうしてるだけ。にしても、今は随分とかわいいコがメンバーにいるんだねー」
「シズクか?面白い能力を使うんだ。あれはレアだ」
「へえ〜 お気に入りなんだー」
「ああ。もちろん」
小さくなったシズクの後ろ姿に、クロロは意味深な視線を投げる。リネルはそれを睨むように見た。
「そんな事より、クロロに聞きたいことがあるんだけど」
「奇遇だな。オレもお前に問いたいことがある」
リネルの態度も表情も、まじまじと不機嫌を押し出しているし挑発的だった。じっと咎めるようにクロロを見据えている。
クロロはそれを物ともせずに、ふわりと柔らかい笑みを浮かべている。
「少し話すか。久しぶりに」
「え…………?」
元より今夜の仕事について、クロロに色々聞きたい事はあった。だが どうにも、2人きりでの内緒話を深読みしたくなってしまい つい返事を濁らせた。クロロはリネルの返事を待たず 伸びた背筋をくるりと返す。ゆっくり歩みを進めてしまう。
「来い。リネル」
例えば 拒否をする選択肢だってあったはずなのだが。不思議とその考えには及ばなかった。
クロロの黒い後ろ姿を見ながら、一定の距離を保ち 真っ直ぐそれを追いかけた。