第36章 嫉妬
そんな時、クロロの方から携帯電話のバイブレーション音が響いた。その場で応じるクロロの携帯からは シャルナークの声が聞こえていた。
「実はさー ちょっと面倒な奴らがいて結構殺っちゃったんだよね」
「何?」
「でさ。人目に付くと面倒だしシズク呼んでほしくて」
「……仕方ないな」
電話を切ると、クロロはシズクを見下ろした。
「聞こえたか?上でお呼びだ。掃除を頼む」
「えっ なんか私ばっかり仕事多くない?」
「そう言うな。」
「んー 団長がそう言うなら……デメちゃんと行ってくる」
シズクは手先をするりとクロロの腕から抜いた。そして、背を向け 小股で淑やかにあっさりその場を歩き出した。
正直、リネルは内心ホッと息をつく。それを見越したように、シズクはくるりと振り返ってくる。
「あっ、そうだ リネルさん」
「な、なに……?」
「いらなくなったら私にちょうだい。その指輪」
「……ゴメンね。これは愛しの旦那様と生涯を誓い合った愛の証だから一生の宝物なの」
これでは下手な当て付けだ。
リネルはわざとらしい笑顔で 早口にそう言い放った。そして、黒いドレスのレース地を揺らしながら去って行くシズクの後ろ姿を見ていた。
ついに、クロロと2人きりになる。クロロはあからさまに肩を揺らし 口元を押さえていた。
「リネル お前は……昔からあそこまでわかりやすいヤツだったか?」
「なに、わかりやすいって」
「餓鬼みたいにヤキモチを妬く人間を初めてみた」
「っ??!」
本当のところは図星と言えるが それを認める勇気はない。リネルは瞳を半分に細め、声を低めた。