第36章 嫉妬
「何してるか」
「……フェイタン……?……驚かさないでよ……」
急な接近に肝を冷やしたものの 相手はこの場で会うかもしれないと想定していた人物だった。リネルは大きく息を吐いた。
「まさか思たけどホントにリネルだたね。馬子にも衣装、誰かと思たよ」
「……多分それはお互いさまだよ」
見ればフェイタンだってきっちり黒いスーツで洋装を固めている。この場に違和感のない格好と気配をうまく消していた点から、本日はリネルの予想通り こっそりと盗みに来た事が伺えた。それを核心に変えるべく、小声で問い掛けた。
「旅団の狙いはココの財閥が持ってるって言うお宝なんでしょ?今日はパーティーを派手に掻き回す気はないんだよね?」
「その質問に答える前にこちの質問に答えるね。何しにここいるか」
フェイタンの刺すような視線は相変わらずだ。一瞬だけ 本当の事を言っていいものかを迷ったが、目的が被らない以上は嘘をつく理由もない訳で リネルは質問の答えを口にした。
「今日はココの人間の暗殺依頼を受けてる。私はただ、その付き添い」
「ナルホド。目的違うなら放ておいて問題ないね」
少しだけ、目元を緩めるフェイタンにリネルはわざとらしく問い掛けてみた。
「……じゃあもし、もしもだよ?こっちの狙いもお宝だったら?」
「何故そんなわかりきたコト聞くか。リネルとて容赦しないよ」
「相変わらず厳しいなぁフェイタンは……」
「リネルが甘すぎるね。目的の為には邪魔者は全て排除、当然ね」
キッパリそう言われた。リネルは悪戯に、舌先をちらりとだけ覗かせた。
しばしフェイタンと話していると 他にもよく知る顔が近付いて来た。
「おっ フェイ、何ナンパなんかしてんだよ」
「声かけたら乗たのはリネルの方ね」
「わーぉ!以外と隅に置けないねー」
見回りでもしていたのかフェイタンと同じくスーツ姿のフィンクスとシャルナークが、グラスを片手にその場にやってきた。
さすがは幻影旅団だ。不穏なオーラは少しもないのに 3人揃えばかなりの迫力がある。
少しだけ怯むリネルに対し、シャルナークは腰を屈めて視線を真っ直ぐ合わせてくる。そして 口をすぼめて感心する声を出した。