第34章 支度
聞こえるのはカメラのシャッター音だった。
会話の途中で混ざってきた使用人の声の方へ 反射的に2人の視線が向かえば、真っ直ぐカメラを向けられていた。先に指摘するのはイルミの方だった。
「何してんの」
「奥様からのご命令でございますので、ご容赦下さい」
笑顔を見せる使用人に、リネルは苦笑いを返した。
「せっかく珍しく2人揃ってオシャレしたし……記念写真てことですか?」
「いえ。リネル様がイルミ様のお仕事に初めて同行する記念、だそうですよ」
「あ、そっちなんだ……」
「母さんらしいね」
使用人はにこにこ明るい笑顔で言った。
「お二人並ばれると大変絵になられます。どうぞお気をつけて行ってらっしゃいませ」
リネルは使用人に身支度の礼を述べた。
そしていよいよだ。2人は黒光るゾルディック家の私用車にて、パーティー会場へと向かった。