第33章 ドレス選び
帰りの車中、リネルは添えられた店舗のカードを見ながらからかう口調でイルミに言う。
「もっとこう、女子アナ系というか王道な感じが好きなのかと思ってたけど」
「え?」
「イルミの好み。大人っぽくてちょっとセクシーみたいのが好きなんだ。知らなかった」
「いや。てゆうかさ、」
リネルの指摘をさらりと流し、イルミは腕を組んでいる。
「それならいざって時にも動きやすいかなって」
「……ああ、そういう。……まぁそうだね。スリットきいてるし、やたらヒラヒラしてるのとかビジューいっぱいみたいのよりはシンプルだし動きやすいかもね」
「動いてもらうかもしれないからね。リネルにも」
「……留意しておきます……」
イルミは着実に機能性重視らしい。
考えてみれば、普段の仕事着からしていかにもそうとしか言いようがないではないか。
ここはドレスの下に映画のような女殺し屋同然のナイフや銃も仕込んでおくべきなのだろうか。
気は抜けそうもなかった。