第3章 決断
「イルミはお見合いするんじゃなかったの?」
「ああ、この前のアレね。ボツになった」
「だからってなんでそこに私が登場するの?意味がわかんない」
「目的は見合いじゃないんだ。要はちゃんと結婚すればいいんだよ。だから」
リネルはわざと大きく首を傾げる。髪がさらりと肩を滑り、それを雑に耳にかけながら言う。
「あのさ、ますます意味がわかんないんだけど」
「だってオレ達結婚したらメリットだらけだよね?お互いに」
「どこが」
「例えばさ。家柄とか肩書きばっか立派なただのオンナよりも能力者であるリネルの方が何かと使えるし、ハンター協会ってやっぱ色々情報多いし。リネルの性格もある程度知ってるから今更面倒な事もないしね」
「それは全部イルミのメリットでしょ。私のメリットはなんだっていうの」
「そうだな……リネルはどうせ結婚しても仕事やめないタイプでしょ?うちは使用人大勢いるから家の事で家庭に縛られる必要もないし、オレも仕事でいない事も多いからお互いに干渉し合わず自由に今までの生活が送れると思わない?」
「それ以前にそもそも私結婚願望ないし」
「オレもないけどね」
「プロポーズしておいて何言ってるの」
もはや呆れる。これでは面倒なお見合い避けのいい隠れ蓑になってくれと言われているだけだ。イルミから愛だ恋だを語られたい思いはなかったが ここまで都合の良い女として扱われるのも感に触る。
そんなリネルの胸中をよそに、続くイルミの言葉にはどこまでも品性がない。
「あと、オレ達身体の相性は悪くないしね」
「…………は?」
「これもメリットポイントじゃない?」
「いや、てかそんなの、知らないし」
「いずれは子供が必要かもわからないしさ」
「冗談じゃない。結婚てまずは本人達の気持ちを大事にするんじゃないの?」
「オレはリネルとならイヤではないよ。リネルのことキライじゃないし」
「私はイヤ。絶対イヤ」
「それは結婚がイヤなの?それともオレの事がイヤ?」
「……どっちもイヤです!!!」