第32章 準備
イルミの背中を見送った後、リネルは状況を頭の中で整理した。
クリスフォードが所持するお宝、即ち魔獣の剥製が幻影旅団の次の狙い。そしてイルミのターゲットはクリスフォードの人間だ。
更には、クリスフォードの当主は多額の費用で腕利きの能力者を雇ったとの事。ヒソカの依頼である「J L A」、ジン曰く金好きで派手好きの人物との話だ。
つまり、クリスフォードのパーティーにて 金で雇われてる能力者は高確率で「JLA」の可能性がある。
「…………。」
ヒソカへ得た情報を出す以上は、確実に「JLA」の居場所を特定出来るパーティーその場にて 顔を合わせる事になるだろう。
クロロの潜入タイミングも気になる所だが、目的の宝を強奪するのにパーティーという 侵入が容易く目くらましにもなる絶好の機会を逃すとは思えなかった。
ごたごたに巻き込まれるのはごめんであるし、彼等との鉢合わせは何としても避けたいところだ。
だが万が一顔を合わせる事になったとしても 互いに仕事ではある。クロロの性格からしても邪魔さえしなければ 何食わぬ顔をしておいても問題はないだろう。
気掛かりはやはり、ヒソカの方だ。
常日頃より何を考えているかわからない上、どんな行動に出るかもよくわからない。以前にヒソカには近付くなとイルミに注意も受けているし 出来ればそんな場所で顔を合わせたくないのが本音だった。
幸いにもヒソカへは、まだ情報提示をしていない。つまりヒソカへは今回の件はただ一言「わからなかった」としらばっくれて謝罪を返せばいいだけだ。
「うん。そうしよう……!」
リネルはすぐさまヒソカにその旨メールを送った。
ヒソカには少々悪いが、何事もなくどうか穏便に進みますようにと
頭の中で祈る思いだった。